ルイスのサッカー考察ブログ

サッカーに関することを、戦術を中心に取り上げ、考察します。たまに、サッカー以外のことも綴ります。

グループリーグ総括 〜支配率が勝敗を分けない時代〜

こんにちは、ルイスです。

 

今回は、グループリーグの総括、全体版です。

ただし、全体版といっても全試合を具に分析する時間はなかったので、まさかのグループリーグ敗退に終わってしまったドイツに焦点を当てて、今大会の特徴を明らかにしていきます。

 

ドイツは前回王者でありながら、グループリーグであえなく敗退してしまいました。

いったいなぜこのような波乱が生じたのか。フランス、ベルギーなど、グループリーグ突破を比較的楽々と決めた他の強豪国とドイツでは、何が違ったのか。

 

それは、「ボール支配率」です。

 

グループステージを勝ち点7以上で突破したチームのボール支配率と、ドイツのボール支配率を比較してみましょう。

 

表記法に関して、ウルグアイクロアチア、ベルギー、フランス、ブラジル、ドイツの順に、決勝トーナメントも含めたこれまでの試合の支配率を記していきます。なお、対戦相手は割愛して、数値のみを記します。

 

ウルグアイ

39%, 57%, 56%, 47%

クロアチア

53%, 42%, 53%, 61%

ベルギー

52%, 52%, 61%

フランス

40%, 44%, 51%, 62%

ブラジル

54%, 56%, 69%

 

そして、ドイツ

72%, 70%, 61%

 

こうしてみると、楽々と決勝トーナメント進出を決めたチームのボール支配率は、ほとんどが50%台以下に収まるもので、逆に、ドイツのボール支配率は3試合中2試合で70%を超えるという、極めて高い数値であることがわかります。

 

これが何を意味するのかは、ボール支配率が、数値上ではないところでいったいどのような意味を持つのかを考えなければなりません。

 

ボールを保持している時が攻撃、そうでない時が守備、ということを前提にするのであれば、ボール支配率はまさに攻撃の時間を表すことができるでしょう。攻撃の最大目標はゴールに迫ることなので、攻撃の時間が長いということはそれだけゴールチャンスがあるという印象を受けがちです。

しかし、今大会のサッカーを観てみると、ボール保持=攻撃、という考えは通用しなくなっていると思われます。

その理由は、今大会においては、堅守速攻サッカーが流行っているからに他なりません。

堅守速攻とは、すなわちカウンターのことですが、この戦術はいったいどのような特徴があるのか少し考えてみましょう。

カウンター戦術とは、ゴール前に8、9人ほどの守備ブロックを作り、相手を攻めさせておいて、ボールを奪った瞬間に前方のスペースを活かして素早く相手ゴールに攻め込む戦術のことを言います。(というか僕はそう解釈しています。)

この戦術には、二つの特徴があると僕は考えています。

 

一つ目は敵チームとの技術差が縮まることです。技術の定義が曖昧ですが、たとえばボールコントロールの技術。

カウンター戦法を採るチームは、攻撃に移る際、広大なスペースを利用できることから、多少ボールコントロールがうまくいかなくても敵にボールを取られるリスクが低いです。

逆に、守備ブロックを作った相手からゴールを奪う際、ボールコントロールは高くなければなりません。なぜなら、自分の意図したボールの軌道と実際の軌道が少しずれるだけで、敵の守備に引っかかるからです。(このことは、カウンター戦術を採るチームが守備においても敵との技術差を埋めることができることを示しています)

 

二つ目は、この戦術を採用するチームのボール支配率は低くなる、ということです。

当たり前ですが、この戦術は相手が自陣に攻め込んでくることで可能になる戦術なので、将棋で言うなら「手番」、つまり主導権を相手に渡さなくてはなりません。

しかし、ボール支配率が低いからといって、相手が手番を持っているからといって、相手が攻撃(これはもちろん「ボール保持」という意味ではありません)できているのかといえば、必ずしもそうとは言えません(ここがミソです)。

なぜなら、たとえボールを保持していても、ゴール前を固められてはシュートまで持って行くのが簡単ではないからです。

実際、ドイツと戦った韓国、スウェーデンにおいて、枠内シュート数はあまりドイツのそれと変わりません。

まとまると、ボール支配率が高い=攻撃(ゴールチャンスをつかむという意味での)ができている、というわけではないのです。

 

さて、話を元に戻しますが、これまでの話を前提にしてドイツのボール支配率を観てみると、それは何を意味することになるでしょうか。

そう、「ドイツは長い時間ボールを保持していたのではなく、いうなれば持たされて、敵陣に攻め込み、まんまと敵のカウンター戦術にはめられてしまった」という意味が浮かび上がってくるのです。

実際、ドイツの失点シーンを観ると、ほとんどがカウンターによるものです。

 

まとめますが、ボール支配率が高い=敵のカウンター戦術にはまっている可能性が高い、そして、カウンターとは弱者が強者を組織で上回ることのできる戦術であり、ドイツの選手たちがどこのビッグクラブで活躍していようがそんなのは関係ない、ということです。

 

今大会は、「支配率が勝敗を分けない大会」ということができそうですね。

 

ご精読、ありがとうございました。

グループリーグで見えた、日本の「攻撃の型」

こんにちは、ルイスです。

グループリーグ戦が終わったので、総括を、日本版と全体版の2本仕立てで行います。

 

今回は日本版です。

 

3試合を通して明らか😎になってきた西野Japanのサッカーを、ミクロ的な視点とマクロ的な視点から分析します。ミクロ的、マクロ的という言葉には様々な意味を付与できそうですが、ここでは、前者は選手の特徴の話で、後者はシステムの話と考えていただければと思います。

 

◯ミクロ的な視点

まずはミクロ的な視点です。

西野Japanの選手たちはどのような特徴を持っているでしょうか。

僕の主観込み込みで、目立つ選手の特徴を出してみます。特徴を表すシーンを画像で観たいところですが、それは難しいので羅列していきます。(読むのがめんどくさかったら飛ばしてください)

 

柴崎岳

攻撃:ボールを受けるためのスペース創出がうまい、幅広い視野、長短を使い分けられ、かつ正確なパス、セットプレーにおけるボールの質の高さ、ボールコントロール技術の高さ、判断の良さ

守備:ファールは少し多いが敵の攻撃をしっかり食い止めてくれる→インテンシティーの高さ

 

香川真司

攻撃:敵のギャップでボールを受ける技術が高い、攻撃にリズムを生み出せる、流動的なポジショニング、ボールコントロール技術の高さ

守備:コース限定のうまさ、豊富な運動量

 

乾貴士

攻撃:仕掛ける姿勢、中へのカットイン、タッチが細かく、柔らかい

 

守備:プレスをかけるかけないの判断が良い、豊富な運動量

 

長友佑都

攻撃:豊富な運動量、縦のスペースをつくスピード、熱い気持ち、瞬間移動

 

守備:1対1の強さ、豊富な運動量

 

大迫勇也

攻撃:反転して敵と入れ替わるのがうまい、キープ力の高さ、ヘディングシュート、半端ないところ

 

守備:コースの限定の仕方

 

酒井宏樹

攻撃:スピード、運動量

 

守備:スピード、運動量

 

昌子源

守備:予測能力の高さ、ポジショニングの良さ

 

 

◯マクロ的な視点

次にマクロ的な視点です。

「システム」といえば、まずフォーメーションが思い浮かびそうですが、大切なのはそこではありません。チームが、攻撃、守備、それから攻撃→守備、守備→攻撃の4つの局目においてどのような「型」、つまり、「決まりごと」に基づいてサッカーをしているのか、そこが重要であると思います。そして、チームとしての「型」は、選手の特徴(これはミクロ的な視点と関係しています)によって変化しますし、変化しないまでも、その型を実現できるかが大きく左右されます。

 

さて、では西野Japanは一体どのような型で戦っているのでしょうか。

今回は、攻撃の型に焦点を当てて話します。

 

攻撃の型

攻撃の起点は柴崎岳です。彼は広い視野を持ち、長短のパスを使い分けられる技術を持っています。長いパスによる攻撃と短いパスによる攻撃を分けて考えてみましょう。

 

長いパスの行先は、長友です。現代サッカーにおいては「両サイドバックが高い位置をとって攻撃参加し、ボランチが落ちてパスを供給する」という形が多いのですが、その形と似ています(ただし同じではない)。「柴崎が右サイドに流れてパスを受け、高い位置を取る逆サイドの長友にロングパスを送る」という型が出来上がっているのです。

ただし、この型を実現する上で、重要な要素があります。

それは、乾の動きです。

長友が高い位置でロングボールを受けるには、縦のスペースが空いていることと、空いてのDFにボールを弾かれないことが必要です。

その点、乾は柔軟に中央に流れていくので、相手のサイドバックを引き寄せる&長友が上がるスペースを空ける、ということができ、型の実現に貢献しているのです。

3戦目のポーランド戦で上記のような型がほとんど見られなかったのは、乾のポジションに宇佐美が入っていたからです。

乾に比べて宇佐美は中央へのポジショニング意識が薄く、サイドからポジションを変える動きをしません。そのため、長友が上がることができないのです。

 

短いパスに関して言えば、香川と乾の二人をあげることができるでしょう。

香川は敵のギャップでボールを受けるのがうまく、中盤でボールを保持する柴崎のパスコースをうまく作っています。

乾は、先ほど述べたような中央へのポジショニングを、ここでも活用してます。

この2人がボールを受けることで、攻撃への期待が一気に高まります。

二人とも狭いスペースをかいくぐるのが得意なので、どちらがボールを受けるにしろ、敵の脅威になることができます。

 

 

ベルギー戦ではまず間違いなく柴崎のマークが厳しくなるでしょう。そうなったときに、CBの二人がどれだけ前線にボールを供給できるか、また、柴崎とボランチを組む選手がどれだけボールを受けられるかが攻撃のカギとなりそうです。

 

次回はグループリーグ全体の総括を、ドイツの戦いぶりに焦点を当てつつやります。

 

ご精読ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 

スイス戦に見る日本サッカーの伸びしろ 攻撃編

ロシアW杯まであと少しですね。

今回は、スイス戦をもとに日本サッカーの伸びしろを攻撃面、守備面に分けて考えます。

「課題」ではなく「伸びしろ」とあえて題打ったのは、日本代表に関する最近のニュースは、あまりにもネガティヴなものが多いからです笑

というわけで、日本サッカーの良い点を見つけ、それを増やしていってほしい、という考えで書きます。

 

まずはフォーメーションから。

 

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典型的な4-5-1システムです。

さて、日本はスイス戦で無得点に終わりましたが、一体どうすれば、チャンスを生み、得点することができるのでしょうか。

このことを3つのテーマに分けて考えていきたいと思います。

テーマの内容は以下の通りです。

①走る(動く)

②仕掛ける

③ゲームメイクの技術

 

①、②はチーム全体の話、③は、本田と香川という個人の選手に関する話です。

それでは早速、プレー写真を見ながら考えていきましょう。

 

①走る(動く)

まず第一に、日本の選手には走力が欠けています。

ここでいう走力とは、「数的優位を生み出す走り」と「敵守備網を崩す動き」の2つを指すものだと考えてください。

前者に関して、写真で確認してみましょう。

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これはRSBの酒井宏樹がパスを受け、本田にパスし、そのまま前線に駆け上がるシーンです。

このシーンは、後の本田のパスミスによってチャンスには繋がらないのですが、攻撃において重要な要素を含んだシーンです。

その要素とは、「数的優位の原則」というサッカーの原則です。

これは、相手より選手の数が多ければ多いほど、相手より優位に立てるという原則のことです。

さて、このシーンに注目してみると、酒井が前線に上がることで、日本は本田、武藤、原口、酒井の四人で攻めることができます。すると、三人しかいないスイスの守備に対して優位に立つことができますね。

こういった状況をもっと多く生み出すことができれば、より多くの攻撃チャンスを生み出すことができるでしょう。

そのためには、やはり走力が必要なんですね。

 

続いて後者のシーンです。

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このシーンの香川に注目してください。

1枚目では、香川は敵の守備網に吸収されるような位置にいます。

しかし2枚目の、柴崎にボールが入ったシーンをみてください。

半身状態を作り、外に少し開くことによって、敵DFを引き寄せることに成功しています。

3枚目からは、武藤がパスを受けるスペースが生まれたこと、そして、香川自身もボールを受けられそうなポジショニングができていることが読み取れます。

結果的に武藤の準備が悪く、柴崎のパスにうまく反応できませんでしたが(4枚目)、このようなプレーは確実に敵の脅威になるでしょう。

 

攻撃パターンを練習すればもっとこのようなシーンを生み出せると思うので、これからに期待です。

 

②仕掛ける

日本代表選手は海外の競合に比べ明らかに仕掛けの意識が低いです。このことは、前線の選手が前向きでボールを持った場面で、強豪国の選手と日本代表選手の目線を比較観察すればすぐにわかります。

強豪国の選手は前線でボールを持った時、まず目の前の敵を見ています。

これは、「今から仕掛けるぞ!」という姿勢を味方と敵に見せるのです。この結果、敵は選手に対して不用意にタックル(ボールを奪いにいくこと)できないし、味方からすれば、動き出しの時間を与えられることになります。

 

では一方で、日本代表の選手はどうでしょうか。

写真で確認してみましょう。

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これは宇佐美がボールを持ったシーンです。1枚目をみると、前線は2対2の同数だということがわかりますね。

一般的に、ボールとマーカーの両方を見ないといけない守備の選手に対し、攻撃側の選手は優位に立つことができます。

従ってこのような状況では、宇佐美は間違いなく仕掛けるべきなのです。

しかし、2枚目を見たらわかるように、宇佐美は仕掛けませんでした。敵にボールを取られないように前に運び、結局切り返して逆サイドの原口にパスを出してしまいました。

3枚目では、敵のDFが大急ぎで帰ってきたこともあり(すごい数!)、もうシュートどころかパスさえできないような状況です。

写真の左上を見てもらえればわかりますが、1枚目から2枚目までの間、わずかに3秒です。少しきつい言い方になりますが、この3秒の間に宇佐美が安易な選択肢に逃げたせいで、みすみすチャンスを潰してしまったのです。

では今度は、仕掛ける姿勢が見られた乾にスポットを当てて見てみましょう。

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まず1枚目に注目して欲しいのですが、ボールを受ける姿勢が素晴らしいです。乾はボールを受ける際、左足でトラップしています。

このような場面では、的に奪われることを恐れて右足でトラップする選手が多いのですが、それでは敵の脅威になれません。

乾は左足でトラップすることで、敵に仕掛けられる姿勢を生み出しているのです。2枚目をみればわかるように、このマッチアップで乾は敵に勝ち、攻撃の流れを生み出すことに成功しました。

3枚目は別のシーンですが、この写真は乾の仕掛ける姿勢を如実に表していると言っていいでしょう。体はしっかりと目の前の相手に向き、目線は相手の足元とボールをうまく捉えています。この結果、相手は迂闊に飛び込めず、非常に守備がしづらくなります。

前線の選手がもっとこのような姿勢を持つことができれば、攻撃はさらに活性化すると思います。

 

③ゲームメイクの技術

これは本田と香川を比較する話ですが、結論から言ってしまうと、本田を外して香川をトップ下で使ったほうがいいということです。このことを、「ゲームメイクの技術」という視点から考えていきたいと思います。

現代サッカーは昔に比べて組織的な側面が強く、マンツーマンDFというよりかは守備ブロックを作って守るということのほうが多いです。

従って、トップ下の選手にはそのような守備網を崩す能力が必要になります(この能力のことをここでは「ゲームメイクの技術」ということにしましょう。)。

では、守備網を崩す能力とは、一体どのようなものなのでしょうか。

これを全て出すのは大変なので、実際に両者のゲームメイク技術に差が出たシーンを見てみましょう。

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 1枚目、香川は敵のDFに少し付かれていますが、斜めの動きでうまく死角に入って いきます。この動き、体も味方の方をしっかり向いているところも素晴らしいです。

2枚目では敵のギャップにポジショニングすることができており、いつでもパスを受けられます。

3枚目の後、柴崎は吉田にパスを出しました。吉田がトラップした時、香川はしっかりボールを呼び込んでいますね。敵のディフェンスラインのギャップを綺麗につけており、バイタルエリア攻略の期待が十分に持てます。

パスの出し手に技術があれば、間違いなく敵の脅威となるプレーが生まれたことでしょう。

続いて本田のプレーを見てみましょう。

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まずはこのシーンから。

本田はバイタルエリア付近でボールを持ち、サイドを長友が駆け上がってきたシーンです。

本田は長友を使わず、敵のプレスがない状況でクロスを選択しました。

しかし、敵のバイタルエリアは綺麗に空いており、ここを宇佐美との連携でつくべきだったでしょう。あるいは、長友にパスを出せば、写真の矢印が示すように中にえぐっていくことができたでしょう。

クロスという安易でもっとも日本代表にとってもっとも可能性の低いプレーを選択してしまう本田にゲームメイク技術があるのか疑問です。

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 次は槙野がドリブルで持ち上がったシーン。本田は右サイドで歩いています。

図の矢印のような動きがあればよかったかもしれませんが、それにしてもトップ下が攻撃中に何でボールとは逆のサイドでお散歩しているのか。いやな言い方にかるかもしれませんが、香川であればうまく黄色楕円のスペースでボールを受け、決定的なプレーに結びつけられたでしょう。

 

以上のことを考慮すると、僕は本田より香川にトップ下を任せるべきだと思います。

 

攻撃編はこれにて終了です。

ご精読ありがとうございました。

西野Japanの見せるサッカーとは? 後半編

こんにちは、ルイスです。

前半編に引き続き、ガーナ戦のマッチレポートやっていきます。

 

後半編は、システムというより選手に目を向けた話をしていきましょう。

というのも、後半は敵の戦術との関係で日本代表のシステムがどう機能するかというよりも、2点を取ってもう責める必要の無くなったガーナの守備をどう崩すかが焦点になる試合運びだったからです。

 

ではまずはフォーメーションです。

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宇佐美→香川、原口→酒井高徳、大迫→武藤と、前半から3人の選手が変わりました。

システム自体は変化していないので、交代した選手が自分の持ち味をどう出すかがポイントになりますね。

 

ここからは分析や考察というよりも感想っぽくなってしまうのですが、僕が見ていて感じたことを書いていきます。

①本田のポジションについて

今回の試合、本田のポジションはダブルシャドーの一角でした。しかし、あまりいいパフォーマンスを見せれていたとは思いません。何が問題なのかを少し考えてみました。

冒頭にも述べましたが、ガーナ戦の後半は、敵陣をどう崩すかがテーマでした。守備を固めた相手に対するツーシャドーの役割は何か。

それは、敵MFのラインと敵DFのラインの間でボールを受けることがまず重要です。

本田はこの点に関して、DFラインに吸収されることが多い気がします。キープ力やシュートのパンチ力は高い方だと思いますが、一方で、敵守備網を崩すというポジショニングセンスは低いように感じます。

また、敵守備網に吸収されてそこからサイドに流れるという動きがあるのならいいのですが、吸収されたまま動きがないので、パスの出し手としてはどん詰まり状態といった感じで、攻撃の形が見えてきません。

以上を踏まえ、本田はツーシャドーの選手ではないなあと感じました。昔ほど体のキレがないので、動いてスペースを作るというのが難しいのかもしれませんね。

個人的な意見ですが、ボランチとかに配置した方がまだいいと思います。

 

②香川の動きについて

本田との比較になってしまいますが、今試合の香川の動きにはキレが感じられました。敵と敵のギャップにうまくポジショニングできてますし、パスを受けた後のプレーにもよどみがなく、まさにゲームメーカーといった感じでした。怪我明けとはいえ、コンディションはいい方なのではないでしょうか。

正直なところ私は香川があまり好きではなかったのですが、調子のいい時のプレーは独特のリズムを感じさせ、見ていて面白いです。

 

酒井高徳の運動量

後半からの出場とはいえ、酒井高徳の運動量には目をみはるものがありました。日本は、ボールを奪ってカウンターとまではいかないような状況の時、とりあえず味方にボールを預けることが多く、だらだらした攻撃になりがちですが、酒井は自分で大きくボールを持ち上がるなど、積極的な攻めの姿勢が見られました。

ワンツーなどでサイドからペナルティーエリアをえぐるような動きができればもっと敵の脅威になれると思います。

 

④柴崎のプレーについて

後半戦で最も活躍していたのがこの柴崎ではないでしょうか。的確な縦パスに積極的なシュート姿勢、サイドに流れる動きなどで多くのチャンスを演出しました。

他の選手と比べ一つ抜けていると思ったのが、パスを出した後の動きとパススピードの速さです。

柴崎はパス&ゴーが徹底されていて、ボランチではありますが積極的に前線に上がり攻撃に厚みをもたせました。

また、パススピードが他の選手よりも速く、柴崎投入後、試合がしまったように感じました。

これらの点はスペインサッカーで磨かれた部分ではないでしょうか。ゲームメーカーとしての活躍に今後期待が高まります。

 

なんだか後半は薄い内容になってしまいましたが(多分モチベーションのせい。岡ちゃんの出番なくて申し訳ない)これにて終了です。

最後に私の考える現段階での理想フォーメーションをあげておきます。

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ご精読ありがとうございました。

西野Japanの見せるサッカーとは?ガーナ戦考察 前半編

こんばんは、ルイスです。

 

今回は、5月30日に行われたガーナ戦をもとに、西野Japanの展開するサッカーを考察します。

今回の試合は前半と後半で全くと言っていいほど試合の運び方が違いました。なぜかというと、スコアの状況によってチームの戦い方の方針が変わるからです。

この試合で日本は、前半の9分、後半の6分に失点しています。いずれも早い時間帯での失点です(ここは重要なポイントです)。

ただし、前半の失点によって日本のサッカーシステムに大きな変動はなく、失点前と同じような方針で45分を終えたと見ることができるでしょう。変化があったのは後半の2失点目以降です。ここから日本は点をとる必要に迫られました。

このことを踏まえ、日本は、前半では西野監督が試したかったシステムを実行することを、後半ではボールを支配しつつ、引いた相手をどう崩すかを考え、実行することを(ガーナの運動量が落ち、前半のようにタイトなハイプレスをかけられなくなった、というのが後半の支配率の要因です)、試合の目標としていた、ということができるでしょう。

このような前提から、前半はシステム的な話を、後半は攻撃の中で印象的だったシーンを取り上げ、日本代表チームの課題と、可能性について雑考します。

 

前半:3-4-2-1

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 基本形は3-4-2-1ですね。西野監督、早速新しい形を試してきました。

ここから以下は攻撃時、守備時に分けて考えます。それぞれについて、まず西野監督の考えたであろう戦術を解説します。その後、実際にその戦術が機能したのかどうかを評価していきます。

 

◯攻撃戦術

3-4-2-1のシステムを採用した西野監督の攻撃戦術はおそらく以下のようなものだと思います。すなわち、原口、長友という運動量豊富で突破力の高い選手を生かして、ディフェンディングサードからミドルゾーンにかけては安定したパス回しを行い、敵が前からプレスをかけてきたら長友や原口が前方に空いたスペースをついて、ミドルゾーンからアタッキングサードにかけて数的優位を作って戦う、という戦術です。

この戦術の特徴としては、両サイド(ここでは原口と長友)の選手にかなりの運動量を要すること、ビルドアップに際してCB→ボランチというボールの移動がほとんどないため、ショートカウンターを受けるリスクが低いこと、の2点です。

実際の試合はどうだったかというと、ミドルサードからアタッキングサードにかけて、敵の守備陣網が安定している時の攻撃には、期待の持てる動きがあまり見られませんでした。強いてあげるとするなら、原口のサイド突破(ドリブルではなく、裏のスペースでパスを受ける動き)と宇佐美の積極的なシュート姿勢ぐらいでしょうか。おそらく西野新体制に変わったばかりで攻撃のパターンが確立できていないのだと思います。

しかし、ディフェンディングゾーンからミドルゾーンにかけての組み立てには戦術の特徴が見られました。長谷部→吉田→原口→大島という流れでリスクの低い、正確なパス回しを見せ、そこからサイドの原口が前のスペースをついていきます。ポイントは、原口がボールを受ける際に低い位置まで落ちてくることです。それによって、リスクが低く、短くそれゆえ正確なパス回しを実現することができ、なおかつ原口が活用する前方のスペースを開けておくことができます。

 

このような攻撃戦術を実現するにあたり、チーム全体として頑張らなければならないことが一つあります。

一つしかありませんが、これが結構致命的です泣

それは、パススピードです。

日本のパススピード、遅すぎます。せっかく原口と長友というタレントを持っているのに、組み立てのパススピードが遅いせいで、原口、長友が狙おうとする前方のスペースを敵に消されてしまいます。西野監督の戦術を実現しやすくするためには敵がハイプレスをかけてくる必要があるので、そう考えるとパススピードの遅さは敵のハイプレスに拍車をかけているとも考えられそうですが、それが許されるのはバックラインで回している時だけです。中盤からはいよいよ空いたスペースを使おうという段階なわけですから、その時にパススピードが遅いと戦術が実現しません。この点は早急に改善した方がいいでしょう。

 

◯守備戦術

守備の時は、両サイドの選手が落ちてきて、5バックになります。

敵のサイドバックをダブルシャドーが見て、敵の中盤と前線の選手は5バックとボランチが厚いブロックを形成して防ぐ、といった形を見ることができます。

日本はフィジカル面で海外の選手に劣るので、ディフェンスラインに厚みを持たせて数でカバーするのは悪くないと思います。

また、中盤の4人は(ボランチとツーシャドー)敵のマークのつき方に慣れていないでしょうが、それにもかかわらず、サイドバックにパスが出た時にはシャドーの選手が出ていくなど、動きに一貫性は見られました。

しかし、この守備戦術にも穴はあります。それがガーナ戦で露呈しました。

それは、ロングボールへの対処です。このことを、4バックの時の守備と比較して考えてみましょう。

4バックの場合、センターバックは2人います。そのため、もし敵のFWに競り合いで勝てないとしても、もう一人のセンターバックがカバーすることができます。

しかし、3バックの場合はどうでしょう。ガーナ戦では長谷部がセンターバックを務めましたが、ピンポイントで長谷部の裏を狙われた時に、他のディフェンスの選手がカバーできるか不安です。

実際、ガーナ戦での2点目の失点も、長谷部の位置を狙われての失点でした。空中戦に強い選手を配置しないと、少し不安があります。

W杯のような大きな大会では、どのチームも試合の序盤は自陣でのボールロストを怖れてロングボールを多用するでしょうから(ガーナ戦の失点も試合の序盤でした)、そのロングボールに対応できるような選手を配置するか、カバーリングの意識をもっとディフェンス間で高めた方が良いでしょう。ロングボールを蹴らせないようにするという方法も考えられますが、前線が一人しかいない日本代表では、それが難しいです。

 

前半編はこれにて終了です。ご精読ありがとうございました。

後半編に続きます。

 

 

 

 

 

 

ハリルホジッチ解任について

こんにちは、ルイスです。

今回はハリルホジッチ解任について考察します。

ハリルホジッチ解任の概要はもうご存知でしょうから、この解任の裏にはどのようなカラクリが存在するのかを考えていきましょう。

日本サッカー協会田嶋幸三会長は、ハリルホジッチ解任の原因は、「選手との信頼関係が薄れた」ことだといったそうです。この発言からカラクリを暴いていきます。

「選手との信頼関係が薄れた」とは、一体何を意味するのでしょうか。ハリルホジッチは会見で、選手とのコミュニケーションは十分だったと述べています。であるからこそ、解任の理由に納得できず、「真実を探しに来た」という発言があったのでしょう。両者の主張は相反しています。なぜでしょうか。私はここに、「信頼関係」という言葉が意味する内容の、「食い違い」が存在するのではないかと思います。

食い違いが生じたのは、当たり前ですが、両者の考える「信頼関係」が異なるからです。この「信頼関係」というのは、試合結果云々ではなく、いわば日本代表というチームを作り上げる「プロセス」における話ですから、食い違いの原因もチーム作りのプロセスにあるはずです。私はこの食い違いに関して、ハリルホジッチと日本代表選手(特に本田圭佑を中心とする、ハリルホジッチと確執のあった選手たち)の、「チーム作り観」が異なっていたということに原因があると思います。

「チーム作り観」とは、このようにしてチームを作り上げていくべきだ、という考えのことです。では、具体的に「チーム作り観」にはどのようなものがあるのでしょうか。また、そもそも「チーム作り」とはなんなのでしょうか。

チーム作りの定義、そしてチーム作りの類型(チーム作り観の種類)を見ていきましょう。

一般に、チーム作りというのは「型作り」と言ってもいいほどで、このような方針で攻撃しよう、守備しよう(他にもたくさんあります)、という思想をチームで共有することです。代表選手のインタビューでよく耳にする「自分たちのサッカー」というフレーズは、まさにこの「型」のことを言っているわけなんですね。

そのような「型」を作り上げる方法は、大きく分けて二つあります。監督が作るか、選手が作るかです。そして、監督の方はさらに2パターンに分けられます。
結論から言ってしまいますが、今回の解任の原因は、型を作り上げる主体を「監督」であると考えるハリルホジッチと、「選手」であると考える本田圭佑らが衝突した結果、ハリルホジッチと一部の選手に亀裂が生まれ、それを受けた田嶋幸三会長が一部の選手側についたことにあります。
それでは、まずは監督が作る方から見ていきましょう(興味のない方は読み飛ばして頂いても構いません)。

サッカーの監督が型を作り上げる際に用いる手段は、2パターンあります。
一つは、選手の特徴を見極め、それを活かせるように編成するパターン。もう一つは、自分の志向する型に、選手を当てはめていくパターンです。要するに、選手が先か、型が先か、という話ですね。
前者は、シーズン途中に監督が交代した際、新監督がよく用いるであろう手段です。高さがある、突破力がある、クロスの精度が高い、などの選手の特徴を見極め、各選手の特徴が全体としてうまく機能するようにチーム編成します。
後者は、独自のサッカー観を持つ監督がよく用いる手法です。まず、監督の実現したいサッカーのスタイルがあり、そのスタイルにあった選手を起用します。少し悪い言い方になるかもしれませんが、「選手を手段として用いる」という色彩の強い手法というわけです。
実際に行われているチーム作りは、この2パターンを対極に置き、どちらかのパターン、あるいは2パターンの間、に位置付けられるものが大半でしょう。

では、次に選手が型を作る方です。これは特殊なパターンですが、現在の日本代表はこのパターンに位置付けられます。なぜこのパターンに陥ったのかという原因に関する考察もしていきます。

選手は基本的に、チームの型を体現する手段です。グアルディオラ時代のバルセロナで考えると、チームの型である「ポゼッションサッカー」を、広い視野と正確なボールコントロールを持つシャビや、細かいドリブルで敵の包囲網をかいくぐるイニエスタ、メッシがうまく関連して体現するのです。

しかし、選手がこのような「手段」としての枠をはみ出して、チームの型を作り上げる側になることがあります。その選手こそが、「本田圭佑」をはじめとする経験豊富な日本代表選手なのです。
このような選手たちは、「自分たちのサッカー」という表現をよく使います。サッカーのプレーにおいて、自分たちの描く理想の形があるのでしょう。

では、なぜこのような選手が生まれるのかを、クラブチームにおける選手事情と代表における選手事情との違いから考えてみましょう。

クラブチームでは、クラブの欲する選手と、能力を持つ選手が「契約」することで、選手がチームに所属することになります。そのため、クラブの要求に応えられない選手は当然契約を更新されない、あるいは放出されます。このようなクラブと選手の関係は、労働者が企業で働くのと似ています。そこでは、選手はクラブの期待に応えられるように自分の役割を考え、あるいは監督から求められ、フィールドで表現するのです。

しかし、代表の場合はどうでしょうか。代表は、「招集」という形で選手がチームに所属します。また、クラブほど試合が多いわけではなく、選手が周りから判断される機会が少ないので、招集メンバーを変更するハードルが高いのです。例えば、新メンバーが日本代表に招集されるには、①クラブチームで活躍し、②それが監督の目に止まり、あるいは耳に入り、③日本代表に招集され、試合に出場し、④結果を残して監督や国民に認められる、という多くの門を突破しなければならないのです。逆に言うと、一度代表選手として認められてしまえば、上記のようなハードルを超える若手が出てこない限り、長期雇用安泰です。
このような事情が原因で、代表のベテラン選手は「手段」としての自分を忘れ、日本代表は自分が引っ張るのだという強い気持ちに動かされ、そして、「自分たちのサッカー」なるものを志向し始めるのでしょう。しかし、もはやここでいう「自分たち」とは、「日本代表チーム」ではなく、「日本代表に長く活躍してきた我々中心選手」を指しているように思われるのは、私だけでしょうか。

上記のような状況に陥った日本代表メンバーでは、ハリルホジッチとの間に亀裂が生じるのはごく自然なことのように思われます。ハリルホジッチは、選手の特徴に目を向けて様々な可能性を試し、どのような相手に対しても有効なサッカーができるようにチームを編成することを目指していました。そこでは、自分の意見に歯向かう選手は招集外という形で排除し、選手間でのミーティングも禁じたそうですね。おそらくハリルホジッチは、自分の掲げる方針を一部の選手に乱されたくはなかったのでしょう。しかし、これまで長く日本代表を支えてきた選手たちには、いわば代表の中心プレイヤーとしてのアイデンティティーがあり、それを監督にやすやすと傷つけられるのは納得がいかなかったのではないでしょうか。

それでは本題に戻ってまとめます。
これまでの話を考慮すると、ハリルホジッチにとっての「信頼関係」とは、自分(ハリルホジッチ)の考えるサッカーを選手に説明する義務を果たしたか否かであり、その点でいえば自分と選手の信頼関係は薄れていないと思ったことでしょう。ハリルホジッチ流のサッカーを選手に納得してもらえるかどうかという点は論外なのです。
一方、日本代表のベテラン勢は、自分たち、つまり日本代表をこれまで支えてきたメンバーにフィットするサッカーを志向してくれるかどうかが「信頼関係」であり、この考えでいうと、ハリルホジッチのやり方は「信頼できない」ということになるのでしょう。田嶋幸三会長の判断も、そのような立場を支持するものだと思われます。

日本代表はどちらの選択肢をとるべきだったのでしょうか。
ベテラン勢の気持ちも分かりますが、最終予選で新しい選手が躍動し、結果を残したことを考慮すると、ハリルホジッチを解任するという判断には合理性が欠けているように私は感じます。
また、解任の「仕方」についても、日本らしくないというか、無礼千万でしたね。残念です。
西野朗新体制がW杯でどのようなサッカーを展開するつもりなのか、そのことに関する考察は、また別の機会に。
ご精読、ありがとうございました。

本ブログについて

みなさん、こんにちは、ルイスです。

この度、サッカー考察ブログを開設しました。

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