スイス戦に見る日本サッカーの伸びしろ 攻撃編
ロシアW杯まであと少しですね。
今回は、スイス戦をもとに日本サッカーの伸びしろを攻撃面、守備面に分けて考えます。
「課題」ではなく「伸びしろ」とあえて題打ったのは、日本代表に関する最近のニュースは、あまりにもネガティヴなものが多いからです笑
というわけで、日本サッカーの良い点を見つけ、それを増やしていってほしい、という考えで書きます。
まずはフォーメーションから。
典型的な4-5-1システムです。
さて、日本はスイス戦で無得点に終わりましたが、一体どうすれば、チャンスを生み、得点することができるのでしょうか。
このことを3つのテーマに分けて考えていきたいと思います。
テーマの内容は以下の通りです。
①走る(動く)
②仕掛ける
③ゲームメイクの技術
①、②はチーム全体の話、③は、本田と香川という個人の選手に関する話です。
それでは早速、プレー写真を見ながら考えていきましょう。
①走る(動く)
まず第一に、日本の選手には走力が欠けています。
ここでいう走力とは、「数的優位を生み出す走り」と「敵守備網を崩す動き」の2つを指すものだと考えてください。
前者に関して、写真で確認してみましょう。
これはRSBの酒井宏樹がパスを受け、本田にパスし、そのまま前線に駆け上がるシーンです。
このシーンは、後の本田のパスミスによってチャンスには繋がらないのですが、攻撃において重要な要素を含んだシーンです。
その要素とは、「数的優位の原則」というサッカーの原則です。
これは、相手より選手の数が多ければ多いほど、相手より優位に立てるという原則のことです。
さて、このシーンに注目してみると、酒井が前線に上がることで、日本は本田、武藤、原口、酒井の四人で攻めることができます。すると、三人しかいないスイスの守備に対して優位に立つことができますね。
こういった状況をもっと多く生み出すことができれば、より多くの攻撃チャンスを生み出すことができるでしょう。
そのためには、やはり走力が必要なんですね。
続いて後者のシーンです。
このシーンの香川に注目してください。
1枚目では、香川は敵の守備網に吸収されるような位置にいます。
しかし2枚目の、柴崎にボールが入ったシーンをみてください。
半身状態を作り、外に少し開くことによって、敵DFを引き寄せることに成功しています。
3枚目からは、武藤がパスを受けるスペースが生まれたこと、そして、香川自身もボールを受けられそうなポジショニングができていることが読み取れます。
結果的に武藤の準備が悪く、柴崎のパスにうまく反応できませんでしたが(4枚目)、このようなプレーは確実に敵の脅威になるでしょう。
攻撃パターンを練習すればもっとこのようなシーンを生み出せると思うので、これからに期待です。
②仕掛ける
日本代表選手は海外の競合に比べ明らかに仕掛けの意識が低いです。このことは、前線の選手が前向きでボールを持った場面で、強豪国の選手と日本代表選手の目線を比較観察すればすぐにわかります。
強豪国の選手は前線でボールを持った時、まず目の前の敵を見ています。
これは、「今から仕掛けるぞ!」という姿勢を味方と敵に見せるのです。この結果、敵は選手に対して不用意にタックル(ボールを奪いにいくこと)できないし、味方からすれば、動き出しの時間を与えられることになります。
では一方で、日本代表の選手はどうでしょうか。
写真で確認してみましょう。
これは宇佐美がボールを持ったシーンです。1枚目をみると、前線は2対2の同数だということがわかりますね。
一般的に、ボールとマーカーの両方を見ないといけない守備の選手に対し、攻撃側の選手は優位に立つことができます。
従ってこのような状況では、宇佐美は間違いなく仕掛けるべきなのです。
しかし、2枚目を見たらわかるように、宇佐美は仕掛けませんでした。敵にボールを取られないように前に運び、結局切り返して逆サイドの原口にパスを出してしまいました。
3枚目では、敵のDFが大急ぎで帰ってきたこともあり(すごい数!)、もうシュートどころかパスさえできないような状況です。
写真の左上を見てもらえればわかりますが、1枚目から2枚目までの間、わずかに3秒です。少しきつい言い方になりますが、この3秒の間に宇佐美が安易な選択肢に逃げたせいで、みすみすチャンスを潰してしまったのです。
では今度は、仕掛ける姿勢が見られた乾にスポットを当てて見てみましょう。
まず1枚目に注目して欲しいのですが、ボールを受ける姿勢が素晴らしいです。乾はボールを受ける際、左足でトラップしています。
このような場面では、的に奪われることを恐れて右足でトラップする選手が多いのですが、それでは敵の脅威になれません。
乾は左足でトラップすることで、敵に仕掛けられる姿勢を生み出しているのです。2枚目をみればわかるように、このマッチアップで乾は敵に勝ち、攻撃の流れを生み出すことに成功しました。
3枚目は別のシーンですが、この写真は乾の仕掛ける姿勢を如実に表していると言っていいでしょう。体はしっかりと目の前の相手に向き、目線は相手の足元とボールをうまく捉えています。この結果、相手は迂闊に飛び込めず、非常に守備がしづらくなります。
前線の選手がもっとこのような姿勢を持つことができれば、攻撃はさらに活性化すると思います。
③ゲームメイクの技術
これは本田と香川を比較する話ですが、結論から言ってしまうと、本田を外して香川をトップ下で使ったほうがいいということです。このことを、「ゲームメイクの技術」という視点から考えていきたいと思います。
現代サッカーは昔に比べて組織的な側面が強く、マンツーマンDFというよりかは守備ブロックを作って守るということのほうが多いです。
従って、トップ下の選手にはそのような守備網を崩す能力が必要になります(この能力のことをここでは「ゲームメイクの技術」ということにしましょう。)。
では、守備網を崩す能力とは、一体どのようなものなのでしょうか。
これを全て出すのは大変なので、実際に両者のゲームメイク技術に差が出たシーンを見てみましょう。
1枚目、香川は敵のDFに少し付かれていますが、斜めの動きでうまく死角に入って いきます。この動き、体も味方の方をしっかり向いているところも素晴らしいです。
2枚目では敵のギャップにポジショニングすることができており、いつでもパスを受けられます。
3枚目の後、柴崎は吉田にパスを出しました。吉田がトラップした時、香川はしっかりボールを呼び込んでいますね。敵のディフェンスラインのギャップを綺麗につけており、バイタルエリア攻略の期待が十分に持てます。
パスの出し手に技術があれば、間違いなく敵の脅威となるプレーが生まれたことでしょう。
続いて本田のプレーを見てみましょう。
まずはこのシーンから。
本田はバイタルエリア付近でボールを持ち、サイドを長友が駆け上がってきたシーンです。
本田は長友を使わず、敵のプレスがない状況でクロスを選択しました。
しかし、敵のバイタルエリアは綺麗に空いており、ここを宇佐美との連携でつくべきだったでしょう。あるいは、長友にパスを出せば、写真の矢印が示すように中にえぐっていくことができたでしょう。
クロスという安易でもっとも日本代表にとってもっとも可能性の低いプレーを選択してしまう本田にゲームメイク技術があるのか疑問です。
次は槙野がドリブルで持ち上がったシーン。本田は右サイドで歩いています。
図の矢印のような動きがあればよかったかもしれませんが、それにしてもトップ下が攻撃中に何でボールとは逆のサイドでお散歩しているのか。いやな言い方にかるかもしれませんが、香川であればうまく黄色楕円のスペースでボールを受け、決定的なプレーに結びつけられたでしょう。
以上のことを考慮すると、僕は本田より香川にトップ下を任せるべきだと思います。
攻撃編はこれにて終了です。
ご精読ありがとうございました。