グループリーグ総括 〜支配率が勝敗を分けない時代〜
こんにちは、ルイスです。
今回は、グループリーグの総括、全体版です。
ただし、全体版といっても全試合を具に分析する時間はなかったので、まさかのグループリーグ敗退に終わってしまったドイツに焦点を当てて、今大会の特徴を明らかにしていきます。
ドイツは前回王者でありながら、グループリーグであえなく敗退してしまいました。
いったいなぜこのような波乱が生じたのか。フランス、ベルギーなど、グループリーグ突破を比較的楽々と決めた他の強豪国とドイツでは、何が違ったのか。
それは、「ボール支配率」です。
グループステージを勝ち点7以上で突破したチームのボール支配率と、ドイツのボール支配率を比較してみましょう。
表記法に関して、ウルグアイ、クロアチア、ベルギー、フランス、ブラジル、ドイツの順に、決勝トーナメントも含めたこれまでの試合の支配率を記していきます。なお、対戦相手は割愛して、数値のみを記します。
39%, 57%, 56%, 47%
53%, 42%, 53%, 61%
ベルギー
52%, 52%, 61%
フランス
40%, 44%, 51%, 62%
ブラジル
54%, 56%, 69%
そして、ドイツ
72%, 70%, 61%
こうしてみると、楽々と決勝トーナメント進出を決めたチームのボール支配率は、ほとんどが50%台以下に収まるもので、逆に、ドイツのボール支配率は3試合中2試合で70%を超えるという、極めて高い数値であることがわかります。
これが何を意味するのかは、ボール支配率が、数値上ではないところでいったいどのような意味を持つのかを考えなければなりません。
ボールを保持している時が攻撃、そうでない時が守備、ということを前提にするのであれば、ボール支配率はまさに攻撃の時間を表すことができるでしょう。攻撃の最大目標はゴールに迫ることなので、攻撃の時間が長いということはそれだけゴールチャンスがあるという印象を受けがちです。
しかし、今大会のサッカーを観てみると、ボール保持=攻撃、という考えは通用しなくなっていると思われます。
その理由は、今大会においては、堅守速攻サッカーが流行っているからに他なりません。
堅守速攻とは、すなわちカウンターのことですが、この戦術はいったいどのような特徴があるのか少し考えてみましょう。
カウンター戦術とは、ゴール前に8、9人ほどの守備ブロックを作り、相手を攻めさせておいて、ボールを奪った瞬間に前方のスペースを活かして素早く相手ゴールに攻め込む戦術のことを言います。(というか僕はそう解釈しています。)
この戦術には、二つの特徴があると僕は考えています。
一つ目は敵チームとの技術差が縮まることです。技術の定義が曖昧ですが、たとえばボールコントロールの技術。
カウンター戦法を採るチームは、攻撃に移る際、広大なスペースを利用できることから、多少ボールコントロールがうまくいかなくても敵にボールを取られるリスクが低いです。
逆に、守備ブロックを作った相手からゴールを奪う際、ボールコントロールは高くなければなりません。なぜなら、自分の意図したボールの軌道と実際の軌道が少しずれるだけで、敵の守備に引っかかるからです。(このことは、カウンター戦術を採るチームが守備においても敵との技術差を埋めることができることを示しています)
二つ目は、この戦術を採用するチームのボール支配率は低くなる、ということです。
当たり前ですが、この戦術は相手が自陣に攻め込んでくることで可能になる戦術なので、将棋で言うなら「手番」、つまり主導権を相手に渡さなくてはなりません。
しかし、ボール支配率が低いからといって、相手が手番を持っているからといって、相手が攻撃(これはもちろん「ボール保持」という意味ではありません)できているのかといえば、必ずしもそうとは言えません(ここがミソです)。
なぜなら、たとえボールを保持していても、ゴール前を固められてはシュートまで持って行くのが簡単ではないからです。
実際、ドイツと戦った韓国、スウェーデンにおいて、枠内シュート数はあまりドイツのそれと変わりません。
まとまると、ボール支配率が高い=攻撃(ゴールチャンスをつかむという意味での)ができている、というわけではないのです。
さて、話を元に戻しますが、これまでの話を前提にしてドイツのボール支配率を観てみると、それは何を意味することになるでしょうか。
そう、「ドイツは長い時間ボールを保持していたのではなく、いうなれば持たされて、敵陣に攻め込み、まんまと敵のカウンター戦術にはめられてしまった」という意味が浮かび上がってくるのです。
実際、ドイツの失点シーンを観ると、ほとんどがカウンターによるものです。
まとめますが、ボール支配率が高い=敵のカウンター戦術にはまっている可能性が高い、そして、カウンターとは弱者が強者を組織で上回ることのできる戦術であり、ドイツの選手たちがどこのビッグクラブで活躍していようがそんなのは関係ない、ということです。
今大会は、「支配率が勝敗を分けない大会」ということができそうですね。
ご精読、ありがとうございました。