ルイスのサッカー考察ブログ

サッカーに関することを、戦術を中心に取り上げ、考察します。たまに、サッカー以外のことも綴ります。

西野Japanの見せるサッカーとは?ガーナ戦考察 前半編


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こんばんは、ルイスです。

 

今回は、5月30日に行われたガーナ戦をもとに、西野Japanの展開するサッカーを考察します。

今回の試合は前半と後半で全くと言っていいほど試合の運び方が違いました。なぜかというと、スコアの状況によってチームの戦い方の方針が変わるからです。

この試合で日本は、前半の9分、後半の6分に失点しています。いずれも早い時間帯での失点です(ここは重要なポイントです)。

ただし、前半の失点によって日本のサッカーシステムに大きな変動はなく、失点前と同じような方針で45分を終えたと見ることができるでしょう。変化があったのは後半の2失点目以降です。ここから日本は点をとる必要に迫られました。

このことを踏まえ、日本は、前半では西野監督が試したかったシステムを実行することを、後半ではボールを支配しつつ、引いた相手をどう崩すかを考え、実行することを(ガーナの運動量が落ち、前半のようにタイトなハイプレスをかけられなくなった、というのが後半の支配率の要因です)、試合の目標としていた、ということができるでしょう。

このような前提から、前半はシステム的な話を、後半は攻撃の中で印象的だったシーンを取り上げ、日本代表チームの課題と、可能性について雑考します。

 

前半:3-4-2-1

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 基本形は3-4-2-1ですね。西野監督、早速新しい形を試してきました。

ここから以下は攻撃時、守備時に分けて考えます。それぞれについて、まず西野監督の考えたであろう戦術を解説します。その後、実際にその戦術が機能したのかどうかを評価していきます。

 

◯攻撃戦術

3-4-2-1のシステムを採用した西野監督の攻撃戦術はおそらく以下のようなものだと思います。すなわち、原口、長友という運動量豊富で突破力の高い選手を生かして、ディフェンディングサードからミドルゾーンにかけては安定したパス回しを行い、敵が前からプレスをかけてきたら長友や原口が前方に空いたスペースをついて、ミドルゾーンからアタッキングサードにかけて数的優位を作って戦う、という戦術です。

この戦術の特徴としては、両サイド(ここでは原口と長友)の選手にかなりの運動量を要すること、ビルドアップに際してCB→ボランチというボールの移動がほとんどないため、ショートカウンターを受けるリスクが低いこと、の2点です。

実際の試合はどうだったかというと、ミドルサードからアタッキングサードにかけて、敵の守備陣網が安定している時の攻撃には、期待の持てる動きがあまり見られませんでした。強いてあげるとするなら、原口のサイド突破(ドリブルではなく、裏のスペースでパスを受ける動き)と宇佐美の積極的なシュート姿勢ぐらいでしょうか。おそらく西野新体制に変わったばかりで攻撃のパターンが確立できていないのだと思います。

しかし、ディフェンディングゾーンからミドルゾーンにかけての組み立てには戦術の特徴が見られました。長谷部→吉田→原口→大島という流れでリスクの低い、正確なパス回しを見せ、そこからサイドの原口が前のスペースをついていきます。ポイントは、原口がボールを受ける際に低い位置まで落ちてくることです。それによって、リスクが低く、短くそれゆえ正確なパス回しを実現することができ、なおかつ原口が活用する前方のスペースを開けておくことができます。

 

このような攻撃戦術を実現するにあたり、チーム全体として頑張らなければならないことが一つあります。

一つしかありませんが、これが結構致命的です泣

それは、パススピードです。

日本のパススピード、遅すぎます。せっかく原口と長友というタレントを持っているのに、組み立てのパススピードが遅いせいで、原口、長友が狙おうとする前方のスペースを敵に消されてしまいます。西野監督の戦術を実現しやすくするためには敵がハイプレスをかけてくる必要があるので、そう考えるとパススピードの遅さは敵のハイプレスに拍車をかけているとも考えられそうですが、それが許されるのはバックラインで回している時だけです。中盤からはいよいよ空いたスペースを使おうという段階なわけですから、その時にパススピードが遅いと戦術が実現しません。この点は早急に改善した方がいいでしょう。

 

◯守備戦術

守備の時は、両サイドの選手が落ちてきて、5バックになります。

敵のサイドバックをダブルシャドーが見て、敵の中盤と前線の選手は5バックとボランチが厚いブロックを形成して防ぐ、といった形を見ることができます。

日本はフィジカル面で海外の選手に劣るので、ディフェンスラインに厚みを持たせて数でカバーするのは悪くないと思います。

また、中盤の4人は(ボランチとツーシャドー)敵のマークのつき方に慣れていないでしょうが、それにもかかわらず、サイドバックにパスが出た時にはシャドーの選手が出ていくなど、動きに一貫性は見られました。

しかし、この守備戦術にも穴はあります。それがガーナ戦で露呈しました。

それは、ロングボールへの対処です。このことを、4バックの時の守備と比較して考えてみましょう。

4バックの場合、センターバックは2人います。そのため、もし敵のFWに競り合いで勝てないとしても、もう一人のセンターバックがカバーすることができます。

しかし、3バックの場合はどうでしょう。ガーナ戦では長谷部がセンターバックを務めましたが、ピンポイントで長谷部の裏を狙われた時に、他のディフェンスの選手がカバーできるか不安です。

実際、ガーナ戦での2点目の失点も、長谷部の位置を狙われての失点でした。空中戦に強い選手を配置しないと、少し不安があります。

W杯のような大きな大会では、どのチームも試合の序盤は自陣でのボールロストを怖れてロングボールを多用するでしょうから(ガーナ戦の失点も試合の序盤でした)、そのロングボールに対応できるような選手を配置するか、カバーリングの意識をもっとディフェンス間で高めた方が良いでしょう。ロングボールを蹴らせないようにするという方法も考えられますが、前線が一人しかいない日本代表では、それが難しいです。

 

前半編はこれにて終了です。ご精読ありがとうございました。

後半編に続きます。